第39回セーリングヨット研究会議事録


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1.日 時:2010年 3月 13日(土)

        11:00〜17:30 研究会
        17:30〜19:30 懇親会


2.場 所:

        研究会 - 夢の島マリーナ 2F会議室
        懇親会 - 同上


3.出席者:(敬称略,順不同)

安部光弘、阿部真二郎、雨宮伊作、伊藤 翔、今北文夫、植村浩志、楳田壽雄、大内一之、 大橋且典、岡野良成、鹿取正信、木下 健、木村安宏、久保田秀明、小暮欣也、小林 寛、 沢地 繁、添畑 薫、高石敬史、高橋太郎、谷 信男、長尾専一、西川達雄、西村一広、 林 賢之輔、東野伸一郎、藤井 茂、堀内浩太郎、前田輝夫、牧野久実、増山 豊、松井亨介、 松尾宏平、丸尾 孟、村尾麟一、茂木雅洋、矢島 博、横井達郎、芳村康男、米山蓉子
新入会員:武冨賢二
オブザーバー:Sendoh Robert、廣川まさき
計43名

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 【皆さんの写真,研究会の様子はこちら】


4.会員近況報告

 今回は、楳田壽雄様のお世話で、また夢の島マリーナの会議室で開催させて頂きました。 楳田様いつもお世話頂きありがとうございます。会員近況報告では、新入会員の武冨賢二様、 ならびにオブザーバー参加のSendoh Robert様、廣川まさき様をはじめ、参加者全員からの 近況報告を頂きました。また開催にあたり、夢の島マリーナの経営母体であるスバル興業の マリーナ総支配人である能登敬一様と、夢の島マリーナ支配人の田上雅人様よりご挨拶を頂き ました。今回は第33回アメリカズカップが終わったばかりであり、その速報を西村様にお願い いたしました。また、カナダのクルージングライフスタイルと題して、Sendoh Robert様に カナダのヨット事情などをご紹介頂きました。内容は下記講演要旨に。


5. 議事
(1)夢の島マリーナからのご挨拶

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 夢の島マリーナの経営母体であるスバル興業のマリーナ総支配人である能登敬一様と、 夢の島マリーナ支配人の田上雅人様よりご挨拶を頂き、マリーナ会議室でこのような 研究会が開催されることについて、歓迎の言葉を頂きました。






(2)「ヨットデザイン原論」重版の報告   大橋且典(ヴァンデスュタット大橋)、植村浩志(舵社)

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 L. Larsson著、大橋且典訳の「ヨットデザイン原論」は1997年に舵社より刊行され、 その後絶版となっていたが今年再版された。ヨットの設計に関して体系的に書かれており、 参考になる図表も多いため、設計を勉強したい人だけでなく、セーリングに科学的にアプローチ したいという人の手引書としても最適の本と考えられる。セーリングヨット研究会の会員に 対しては特別価格で提供頂けるとのことなので、詳しくは「舵社」の植村氏、 または「ヴァンデスュタット大橋」の大橋氏へ問い合わせて頂きたい。


(3)スレンダーハルのプレジャーボートについて     堀内浩太郎

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 全長3.3mの非対称カタマランで、3馬力未満の船外機を取り付けるボートを試作した。 ハルは天竜杉の5×15mmのストリップを張り付けるストリッププランキングで製作し、 主船体は16kg、サイドフロートは3kgで、エンジンを含めた全重量は37kgであった。 これに1人乗艇し、3馬力の船外機をつけて走ると11.3ノットという驚異的なスピードが出た。
 現在、これをベースに8mトリマランを計画中である。サイドフロートは走行時に横に広げる ことができる機構とし、最大幅4mとすることができる。18馬力のエンジンで15ktを出す予定で、 同サイズのモーターボートに比べると1/10程度のエンジンで済む。


(4)旋網漁船転覆事故の実験的検証     ○芳村康男(北海道大学)、小森裕介(北海道大学)

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 2008年、千葉県犬吠埼沖350kmの太平洋上において135トン型旋網漁船「第58寿和丸」が 漂泊中に大波を受けて転覆沈没し、17人が死亡するという悲惨な事故が発生した。 この他同様の事故が多く発生しているが、多くは旋網漁のみが転覆している。 これは旋網漁特有の構造によるものと考えられるため、模型を製作して 波浪中の転覆実験を行った。これらの船は大型船なみの漁労設備を持つため、 デッキは広いが総トン数の制約から上甲板が極端に低くなっている。 このためGMは大きいが、復原力消失角は小さい。また波かぶりを防ぐために ブルワークを高くし、サシ板と呼ばれる仮甲板を設けている。この仮甲板と 上甲板の間は実質的に漁具倉庫となっており、ここに海水が打ち込むと放水口から すぐに排出されず、滞留することになる。これらの条件を考慮して実験を行ったところ、 やはり、波高が実船で4mを超えると停泊中でも転覆する可能性が高いことがわかった。 一方、サシ板の下に漁具をおかず、滞留水をスムーズに排出できれば転覆確率を 下げることができる。また、サシ板の下を完全に密閉すればその予備浮力で転覆を 防止できることもわかった。ただし、このためには現状の運用方法や、総トン数の ルールを改める必要があり、困難な問題が横たわっている。
 商船の場合は、SOLASというルールがあるが、どうして漁船の場合にそのような 問題が見過ごされているのかといった質問があり、漁船を取り巻く環境についての 説明があった。


(5)沖縄進貢船の帆走性能       ○増山 豊(金沢工業大学)、八木 光、寺尾 裕(東海大学)

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 14世紀から19世紀にかけて琉球王府は、中国の明朝、清朝へ使節および貢物を送り 朝貢貿易を行った。この目的のために那覇と福建の間を航海したのが、沖縄進貢船である。 当初、進貢船は中国で建造されたが、後年琉球でも建造されるようになった。 明治初期に作られた進貢船の縮尺模型が東京国立博物館に保存されており、 この模型からラインズが作成され、さらに水槽試験用の模型が製作された。 この模型の実船サイズは、全長30m、排水量260トン程度と考えられる。 本研究では、回流水槽試験を行って船体性能を明らかにするとともに、 これに伸子帆の空力性能を組み合わせて、進貢船の帆走性能と操縦運動性能を明らかにした。
 進貢船の帆は中国の伝統的な網代帆であるが、このような帆の性能は 明らかにされていないので、これとほぼ同等な性能を持つと考えられる 伸子帆の風洞試験結果を用いて定常帆走性能を求めた。 その結果、この船は風速10m/sで6ノット程度で帆走することができ、 真風向に対して70°程度まで切り上がることができることが分かった。 また、下手回し性能を明らかにするために、操縦運動シミュレーションを 行って舵を切った後、どのように回頭するか調べた。当時の舵は船尾から ぶら下げる形であり、舵板の下端は船首から船底に沿わせた綱で固縛していた。 このため舵板の深さを変えることができたようであるが、このシミュレーション によって最適の深さを推定することができ、旋回半径80m程度で下手回しが可能で あることがわかった。

パワーポイントのpdfファイルはこちら


(6)第33回アメリカズカップ速報           西村一広(コンパスコース)

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 今年2月に行われた第33回アメリカズカップの様子について、写真を交えて報告した。 2年半にわたる法廷闘争の末、カタマランとトリマランの対決という変則的なレースとなったが、 結果はあっけないほど簡単に片が付いた。アメリカの挑戦艇<USA>(BMWオラクルレーシング:トリマラン)が、 スイスの防衛艇<アリンギ5>(SNG:カタマラン)を2レース連続で破り、 15年ぶりにカップをアメリカへ持ち帰った。アリンギ5は明らかに準備不足の感があり、 艇のパフォーマンスを引き出すことができず、レース運びも下手だった。 一方、USAはソリッドのウイングセールを上手に使い、トリマランのセンターハルまで 水面上に浮かせて走るなど、圧倒的なスピード差でアリンギ5を一蹴してしまった。 次の第34回はモノハルによるレースになると考えられているが、開催地を含めてまだ未定である。
 今回目に付いた新兵器は、レーザー光線を用いて1000m先の風向風速を測定する装置、 船体摩擦抵抗低減のための表面活性剤噴出装置(これまで禁止されていたが、今回から使えるようになった)、 リグなどに作用する荷重センサーをモニタリングしながら帆走するシステムなどであった。


(7)カナダのクルージングライフスタイル      Sendoh Robert(ISPA Japan)
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 Sendoh Robert氏は、カナダに帰化した日本人で、バンクーバー近郊に30年ほど前から在住。 セーリングはカナダに住むようになってから始めた。その後CYAでインストラクターをしていたが、 1994年にISPA (International Sail & Power Association) が設立され、現在は同インターナショナル ディレクターとなっている。また、同団体の日本支部NPOとして2001年にISPA-Jを設立し、 同理事長として日本でも活動中である。ISPAではクルージング・シーマンシップの育成を目標に 活動を行っている。興味のある方は、以下のURLを参照頂きたい。
ISPA
ISPA-J(日本語)
 カナダの海洋活動は、州政府が維持するマリンパークとパブリックドック、親切なコーストガード、 発達したクルーズトレーニングシステム、などの整った社会環境のおかげで非常に快適に行うことができる。 このため、アメリカのシアトルなどからも多くのクルージング艇がやってくる。 バンクーバーではヨット人口が増えており、30ft程度の係留料が月$700〜800するが、 それでも2,3年待ちとのことである。


(8)WindValley Sailing School 体験談                長尾専一
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 ヨット暦40年の長尾氏は、夢の実現に向けて2009年6月に退社、同年8月にISPA公認のWindValley Sailing School のマスターズコースに参加した。トレーニング内容は、ナビゲーション、アンカリング、ワンラインドッキング、 落水者救助、国際VHF(英語によるロールプレイ)、海外クルーズのための必要ドキュメントの英文化 (船籍証や保険証など)など、盛りだくさんであり、これらの内容について説明があった。
WindValley Sailing School(日本語)


(9)エスキモーと私                         廣川まさき
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 廣川さんはヨット乗りではないが、女性単身でアラスカのエスキモーと一緒に住んだりした冒険家である (おしとやかな外見からは想像できませんが)。カキやエビなどを取るために潮汐計算の必要に迫られ、 Sendoh氏から学んだとのこと。エスキモーとの生活の様子を美しいスライドで紹介頂いた。 なお、この内容を本にした「ウーマンアローン」は、集英社のノンフィクション賞を受賞したとのことです。


(10)「セーリングヨットと帆走性能シンポジウム」開催案        増山 豊
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 今年8月28日に開催予定の「セーリングヨットと帆走性能シンポジウム」の、日程、講演内容と講師案、 収支見積りなどについて説明があり、打合せを行った。


6.懇親会

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 講演会終了後、同会議室にて持ち寄り形式の懇親会を開催いたしました。 マリーナレストランからの仕出しもあり、アットホームな雰囲気の中で親睦を深めました。 楳田様には準備に大変お世話になりました。また、会場準備にお手伝い頂きました皆様に 厚く御礼申し上げます。


7.次回予定

   日時:8月28日(土)
     (「セーリングヨットと帆走性能シンポジウム」が第40回を兼ねる)    場所:山上会館



(文責:増山)
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