第34回セーリングヨット研究会議事録


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1.日 時:2008年 6月 28日(土)

        13:00〜 海王丸見学
        14:00〜 研究会
        18:00〜 懇親会


2.場 所:

        研究会 - 航海訓練所練習船・海王丸 講義室
        懇親会 - 海王丸 士官室サロン


3.出席者:(敬称略,順不同)

安部光弘、市川昌幸、今北文夫、楳田壽雄、大野康一郎、大橋且典、鹿取正信、木下 健、 小暮欣也、小林 寛、沢地 繁、高橋太郎、谷 信男、田原裕介、玉村 紳、西川達雄、 二瓶泰範、林賢之輔、東野伸一郎、深澤塔一、藤井 茂、堀内浩太郎、前田輝夫、増山 豊、松井亨介、丸尾 孟、村尾麟一、茂木雅洋、森 純男、矢島 博、山口眞裕、横井達郎
海王丸関係者:雨宮伊作、阿部真二郎、国枝佳明、中村直哉、水溜青雲
新入会員:久保田秀明、松尾 宏平、伊藤 翔
オブザーバー:玉村斉聖、米山蓉子
計42名
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4.海王丸見学ならびに会員近況報告

 今回は海王丸の雨宮船長のご好意のもとに、平成19年3月21日の第31回研究会に引き続いて再度、海王丸船上にて開催させて頂きました。開会にあたり雨宮船長からご挨拶頂いた後、3つのグループに分かれて海王丸の船内を見学させて頂きました。デッキを椰子の実で磨いているのは実は日本の練習帆船だけであり、その始まりはハワイへ練習航海に行った時に椰子の実を差し入れてもらったことによるが、最近は入手が難しくなってきているというお話や、帆を全部外注するとそれだけで2000万円(聞き間違い?)かかるので、皆で縫って作っている(いやいや、それ以上に実習生への教育効果があると思います)といった、貴重なお話を伺うことができました。最近、練習帆船教育不要論を声高に言う要人が増えつつあるとのことですが、船の命運を左右するのはやはりなんと言っても風と波。それを最も直接的に教育できるのはやはり帆船しかないのではないかと、海王丸のマストと索具が立ち並ぶデッキに立って思います。このような帆船教育の存続に、セーリングヨット研究会が少しでもお役に立てればとの思いを新たにいたしました。
会員近況報告は、今回は時間が限られている上、40名を越える参加者があったため手短にとお願いしたものの、やはり1時間を越えてしまいました。海王丸という素晴らしいシチュエーションの中で、皆さんの気持ちもハイになっているようでした。


5. 議事
(1)セール開発について                       鹿取正信

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セーリングヨットの推進力源という最も大事なパーツであるにもかかわらず、セールはこれまでシビアな評価を受けてこなかった。アメリカズカップチームの一員として、実船性能評価を担当し、デザイナーとクルーの橋渡し役を担っていた時にもこの点が大きな問題であった。このため、セール開発を行う上でのデザインスパイラルを描き、これらを結びつける上で必要なシステムの構築を図ってきた。デザインスパイラルは、「セールのデザイン」→「セールの評価」→「セールボートの評価」と回っており、これらを進める上でFEMやCFDなどの数値計算、2ボートテストやレースの評価といった実船データの活用が欠かせない。現在ノースセールで行っている開発フローを紹介した。(文責:増山)

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(2)大型帆船の展帆基準について       海王丸財団一等航海士 阿部真二郎

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 日本丸や海王丸のような大型帆船の帆走航海中において,荒天や強風を予期した場合には,船上での生活や操帆などが安全に遂行できるように,船体傾斜を抑えるため,帆の面積を減じて調整しなければならない。従来,この減帆量については,真風速の風力階級に応じた経験的な目安が設定されているが,船体傾斜角は真風速ではなく,視風向,視風速や船体排水量等によって変化する。そこで,航海訓練所所属の練習帆船の展帆及び畳帆の基準を作成するため,模型による風洞実験等により得た諸係数を用いて,大型帆船の船体傾斜角を計算するプログラムを作成した。海王丸において実船による検証を行った結果,ある積付状態下で帆走中に,任意の風向・風速,展帆状態での船体横傾斜角が,計算可能なことを示すことができた。

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(3)機帆走による燃料節減及び制振効果について   海王丸二等航海士 中村直哉

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 2006年度の実験に引き続き、海王丸の縦帆2枚を用いた機帆走実験を行い検討した。機帆走時、視風向が40度から船尾に回ると燃料消費量は減少、対水速力は増加する傾向があった。機走時に比べ約1パーセントの燃料節減となった。また制振効果も期待され、今後帆面積を増加した場合等についてさらにデータを採取するとともに,将来的にはシミュレーションを行い実際と比較検討したい。



(4)追波中の波浪打込みについて             海王丸船長 雨宮伊作

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 2008年冬季遠洋航海において遭遇した12mを越す高波高とその甲板打ち込みについて,発生当時の気象状況や発生の原因,さらにはその防止方法についてヒューマンファクター,船体運動の両面から検討した結果を報告した。



(5)小型外洋ヨットのワイルドタックやジャイブによる転覆限界風速について 増山豊

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 これまで小型外洋セーリングヨットの風圧による転覆の可能性について検討してきたが、一応のまとめがついたので報告した。平成15年に琵琶湖で起きた、全長6.45m、排水量約1トンの小型外洋セーリングヨットの転覆沈没事故は、タッキング直後にセールに反対舷から受けた突風によって転覆したことが原因と考えられている。この事実を明らかにするため、同一艇種の実船と模型船を用いて実験ならびに解析を行い、ローリングシミュレーション手法を確立して、事故時の風速とシミュレーションによる転覆限界風速が一致することを示した。さらにこのシミュレーション手法を用いて、事故艇より一回り大きいJ/24クラス艇についても転覆限界風速を求めた。これらの結果より、突風による転覆の特性は小型の外洋セーリングヨットに共通する問題であることが明らかとなってきた。このためこのような艇の諸元を調査して平均的な値を求め、いくつかの代表的な艇を創生してシミュレーションを行い、艇のサイズと突風による転覆限界の目安を示すグラフを作成した。

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ローリング試験の動画(セールなし,wmvファイル)はこちら
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(6)INNOV’SAIL2008 参加報告     増山豊

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今年の5月29日,30日に、フランスのロリアンで開催された”Innovation in High Performance Sailing Yachts” シンポジウムに参加したので、その内容について報告した。シンポジウムはフランスで開催されたものの、主催はイギリス造船学会(RINA)である。発表論文数は、フランス10、イギリス2、ドイツ2、イタリア1、オランダ1、インド1、日本1で計18編であった。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドといった、アメリカでのChesapeake Sailing Yacht Symposiumに参加する常連はいなかったものの、ヨーロッパのヨット研究者がかなり集まった感じであった。内容的には、CFDに関するものが7編、風洞や水槽実験に関するものが5編、シミュレーションに関するものが3編、船体構造に関するものが3編であった。名称はInnovationであるが、半分以上はそれほど先進的とは言えないものの、レベル的には高くCSYSとそう違わないように感じた。増山は深澤教授と連名で、上記の小型外洋ヨットの転覆限界に関する発表を行った。インドからの発表は、市販のCFDコードを用いた滑走艇のスラミングに関するものであったが、まだマリンレジャーからは遠いと考えられるインドから発表があったことは、これらの国々がいよいよマリンレジャーに目を向けてきていることを感じさせた。
 開催地のロリアンは、パリからTGVで3時間半ほどかかるブルターニュ地方の大西洋岸の小都市である。会場はこの町にある、大西洋シングルハンドレースの優勝者で、単独世界一周も行ったエリック・タバリを記念した海洋博物館(Cite de la Voile Eric Tabarly、 今年の春に開館)で行われた。エリック・タバリは10年前に海の事故で亡くなったがフランスでの人気は衰えず、ウイークデイにもかかわらずそれほど大きくもない博物館に見学者が途切れずに来ていることに、フランスのヨットやヨットのヒーローに対する意識の高さを感じさせた。博物館の付属ハーバーには、エリック・タバリのPen Duickや、最近の大西洋横断レースの高速トリマランGroupama、北極海を越冬航海したTaraなどが係留され、かなりの人数が係わっているように見えた。またこのあたりの海域は干満の差が5m程と非常に大きいものの、船が係留できそうな入り江にはほとんどと言ってよいほどブイが並んでおり、これにヨット、ボートが係留されていた。お金をかけずにマリンレジャーというよりはマリンスポーツを楽しむ、そんな雰囲気が感じられる街でした。

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5.懇親会

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講演会終了後、海王丸士官室サロンにて懇親会を盛大に行わせて頂きました。雨宮船長から差し入れて頂いた大きなワインカートンや、各地の銘酒を楽しみながら、夜遅くまで議論に花を咲かせました。今回は雨宮船長を始め、海王丸の皆様に大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。来週からのハワイへの練習航海のご無事をお祈りしつつ下船いたしました。



6.次回予定

   日時:11月8日(土)
   場所:東京大学生産技術研究所



(文責;増山.講演概要は基本的に発表者に記述頂いております.)

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