特別講演 人力ボートのいろいろ

特別講演

人力ボートのいろいろ

堀内浩太郎氏
(元ヤマハ発動機(株))
2006年4月1日
第29回セーリングヨット研究会にて

図はクリックすると大きくなります.


目次
 
はじめに
 
1 ローイングボート
 1-1 海のローイング
  1-1-1 カタリナクロッシング
  1-1-2 サウンドロワーズの場合
  1-1-3 海で使うボート
  1-1-4 海で使うスカルの艤装
  1-1-4 海で漕ぐ技術
 1-2 変わったスカル
  1-2-1 水中翼スカル
 
2 カヌー,カヤック,シーカヤック
 2-1 シーカヤック
 2-2 サーフスキー
 2-3 K-60
 2-4 フォイルカヤック
 
3 その他の人力ボート
 3-1 人間の馬力
 3-2 日本の人力ボートレース
 3-3 スーパーフェニックス
 3-4 コギト
 3-5 ポンプバイク
 3-6 マイレージドライブ
 3-7 フリッパー 
 3-8 サーフバイク 
 3-9 パワーフィン 
 3-10 HSB-5
 3-11 KF-50
 3-12 2PF
 
おわりに



はじめに

図2 シングルスカル背
図1 シングルスカル
 オリンピック種目のシングルスカル(図1)を皆さんご存じと思います. 長さは7mを超えますが,幅が30cmに満たない(図2)細長いレース艇で,平水でしか漕げないものと私思っていました.

最近そのスカルが外洋のレースに強いのを知って驚きました.今日のお話の前半はその海のスカルについてお話します.後半は近頃の人力ボートを幾つかご紹介しようと思います.そして最後に,ビデオでその一部のボートの走り方を見て頂くつもりです.

 

1 ローイングボート

 1-1 海のローイング

  1-1-1 カタリナ・クロッシング

図3 カタリナ・クロッシング

 カリフォルニア州,ロングビーチの沖に長さ25kmほどのカタリナ島が浮かんでいます.昔この島から本土側のマリーナデルレイまで外洋を60kmも漕ぐスカルのレースがある,とほのかに聞いていました.最近調べて見たところ,そのレースは今まで実に30年もずっと続いていました.このレース,カタリナ・クロッシング(図3)と呼ばれています.

 昨年からは方向を変えて,マリーナデルレイの方からカタリナ島のイズマス港までレースをするようになり,その後二日掛けてカタリナ島を1周するのだそうです.途中キャンプなどもしてみんなで楽しい週末を過ごすのだと言います.60kmのレースをした後,さらに一周60kmの島を周るそうで,そのタフさには驚いてしまいます.

 このレースは1976年にチャールス・ハザウェイという男が50才の誕生日の記念にカタリナ島からマリーナデルレイの港内にあるカリフォルニアヨットクラブまで漕いだのが始まりで,今年はその30周年記念とハザウェイの80才の誕生日のお祝いを一緒にやるのだそうです.

 毎年の参加は20隻ぐらい,昔はシーカヤックなども参加していましたが,最近はスカルだけになったそうです.その大部分がシングルスカルで,ダブルスカル或いは4人漕ぎスカルも出るようです.シングルスカルの記録は4時間50分,これだと時速12kmを超えます.金井さんの話ではシーカヤックの場合,時速10kmだそうですからスカルの方がどうやら外海で速いみたいです.
 コースが本船航路とクロスするので,安全のためそれぞれ随伴艇を付けるそうです.今年のレースは9月8日から10日です.このレースは知るほどに夢を感じます.

 

  1-1-2 サウンドロワーズの場合

図5 レース日程
図4 ピュージェットサウンド

 シアトルの北の,島の多い内水面はピュージェット・サウンドと呼ばれています(図4).

 幅7〜8kmほどの水路が100kmも続いていて,多くの島がありますし,北に進むとアラスカに達するという恵まれた水面でして,モーターボートやヨットの天国とも言われています.客船のクルージングコースとしても人気があります.この海でローイングやパドリングを楽しむ人の団体がサウンドロワーズです.サウンドとは湾のことだそうです.これはカタリナ・クロッシングよりはずっと穏やかな海のレースなのでしょう.

 今年ピュージェット・サウンドで行われるレースの一覧を見て下さい(図5).
距離にして8kmから42kmのレースが1年間に18回もあります.ここではカヌー・カヤックとスカルが一緒にレースをしています.ハンディを設けたりカテゴリーを分けたりして,いろいろな種類の船が平等にレースを楽しめる工夫をしているようです.今まで我々はスカルは平水のものと決め込んでいたのに.彼等は平気で海のレースをしていたわけです.
これに驚いて多少勉強してみました.

 

  1-1-3 海で使うボート

図6 マースシリーズ

 海で使われているスカルをご紹介します(図6).カタリナ・クロッシングで一番使われるのがマース社のボートなので,そのシリーズを見て頂きます.左上の「エアロ」というボートは安定が良いので初心者にも乗りやすく,以前はカタリナ・クロッシングで良く使われたようです.

 一方,その下の「マース24」は遙かに細長く,その分速いのでしょう.最近のカタリナ・クロッシングでは殆どのシングルスカルがマース24になってきたそうです.シングルとあるのは平水用でこれが我々の言うシングルスカルですから,幅の違いが良く判ります.(図7

図7 3断面比較

 それらの船の断面を見て頂きます.一番左のフィリッピは平水用のレース用スカルです.比較すると中央のマース24は断面積が二倍近くあります.喫水線から上の幅を広く取り,傾斜した時の復元力を大きくすると共に容積を大きくして中に浮体を入れ,例え浸水しても漕いで帰ることの出来る配慮をしたものと思います.エアロになるとさらにさらに大きい断面になります.こうして予備浮力を大きくし,サーフィングした時に波にバウを突っ込まないように,また突っ込んだ時にも早く浮かせるのでしょう.

 

  1-1-4 海で使うスカルの艤装

図9 エアロの艤装2
図8 エアロの艤装1

 海でスカルを使うには,それなりの装備が必要です.その例を見て頂きます(図8).

 エアロにコンパス,飲み物のボトルなどを積む他,ストロークコーチと言って時計,ピッチや艇速の判る漕艇専用の計器を付けた例です.ここには見えませんが自動排水装置,大型フインなどがオプションで用意されています. 自動排水装置というのはディンギーに付けるのと同じ金具で,漕いでいると殆ど完全に排水できます.このエアロを見るとサイドデッキの幅を広く取って,コックピットの容積を極力小さくしている様子が判ります.コックピットに大量の水が溜まらないこと,これが海のスカルの基本なのです.(図9

 もう一つのエアロは,ライトのポ一ルを船尾に立て,防水バッグに衣類などを入れて,船尾のキャンバスにくくりつけています.また最近は当然GPSも積むそうです.

 

  1-1-5 海で漕ぐ技術

図10 荒海での技術
 オープンウオターローイングクラブ,略称OWRCのホームページにはラフウオターテクニックと称して外洋の漕ぎ方を詳しく説明しています(
図10,ホームページのURL一覧を末尾に掲載しています). グリップ,肩,腕の力を充分抜いて,ともくリラックスして水中を平らに引くこと,スライドを短く使い,ストロークを短めにすること,また軽く素早いキャッチすることなど強調しています.またボートが安定しない時,波に突っ込んだ時などはともかくブレードを平らにして船が落ち着くまでじっと待てという具合に,経験に裏付けられた注意が載っていて,読んでいて成る程と思います.

   マースのボートはキャンバスの中に6個の浮体を入れていると書いてあります.ラフウオターテクニックでも浮体を入れることを勧めています.水抜き栓を閉め忘れたり,一寸した隙間があったり,更には孔があいて浸水したとしても必ず漕いで帰れるための配慮で,横安定の他,大きな予備浮力と浮体の装備が平水のスカルとの一番の違いなのでしょう.スカルはオールを突っ張っている限り決して転覆はしません.ストロークを長く取りすぎてオールが船と平行になると転覆しますが,再乗船は容易ですから海で強いことは確かで,それを今更ながら知ったことでした.


 1-2 変わったスカル

  1-2-1 水中翼スカル

図11 水中翼スカル
 ここからは変わったスカルのお話です(
図11).1980年頃,速いスカルを夢見て,水中翼スカルを設計したことがあります. ご覧のように左右リガーの下に脚が生えて,その下に水中翼が着いています.脚から後に細い棒が出ていて,その先の羽根を水面に引きずっています.その棒の動きで水中翼の後のへりを動かし,水面から10cmほどの高さを保って,空中を飛ぶように走るスカルです.

 こうすれば船体の抵抗はなくなり,水中翼の抵抗だけになりますから時速28km(7.7m/s)で走る計算でした.もしそれが続けば2000mを4分30秒で走ります.

 私はこの水中翼スカルを実際に作りませんでしたが,最近になってヨーロッパでスカルに水中翼を付けて走らせた人がいます.その写真を見たこともあるのですが,残念ながらホームページが判らなくなって今回はご紹介ができません.一方,カヤックに水中翼を付けている人がいますので,そのことは後ほどご紹介をしましょう.          

 

  1-2-2 英国のカタマランスカル

図13 ローキャット2
図12 ローキャット
 2年前のロンドンボートショーでカタマランスカル「ローキャット」(
図12)を見ました. 波に強いのが売りです.又スライディングリガーと言って,シートが船に固定され,靴とリガーがスライドする方式をとっているのに驚きました.この方式は高性能ですが,価格が高くなると言う理由で国際レースに使うのは禁止されています.

 長さが5m,幅1.6mで安定は良いのでしょうが重さが26kgと普通のスカルの二倍もあって,船の出し入れは大変だろうと思いました.場所を取りすぎて艇庫に入れて貰えないかも知れません.毎日漕ぐ人には向かないでしょう(図13).

 またカタマランはぬれ面積が大きいので,漕いでも重いだろうと思います.デザイナーの努力は認めますが,欲しいとは思わないスカルでした.しかしこのひどい波で漕いでいる写真には感心しました.もし自信を持ってこんな荒れた海を渡れるとすれば,それはそれで楽しいと思います.

 

2 カヌー,カヤック,シーカヤック

 2-1 シーカヤック

図14 シーカヤック
 次はシーカヤックなどの話です(
図14).現在はこのようなシーカヤックが非常に普及しています.年間3万隻ものカヤック,シーカヤックが輸入されて,頻繁にそのレースが行われているようです.



 2-2 サーフスキー

図15 サーフスキー
 もう一つ,海で強いのがサーフスキーです(
図15).もともとライフセービングに使う船で,サーフィングもできる,そして上にポンと乗るだけなのでコックピットに水は溜まりません.沈しても再乗船は簡単です.とても速くて沈も平気なので日本でもこの頃だんだん数を増していると聞いています. レースにはサーフィングの技術が重要になるそうです.                

 

 2-3 K-60

図16 K-60
 当会メンバーの金井さんは,奄美大島で行われるシーカヤックのレースに出ておられます. 毎年,名古屋港から300隻のシーカヤックとクルーが専用のフェリーに乗り込んで奄美に渡ります.そして向こうでレースなど一週間の夏休みを楽しむのだそうです.そのレース用に金井さんが作った船です(
図16).

 普通のシーカヤックは喫水線の幅を5〜60cmとして横安定を保っています.しかしスカルと同じように腰の位置をもっと上に上げて,思い切って舟を細くしても漕げるだろうと考えてスカルのプロポーションをこの船に取り入れました.長さは6m,そして喫水線の幅が僅か23cmで,両サイドにはフロートを付けました.慣れるとフロートを水につけないで漕げますから,これでレース用のシーカヤックに比べると抵抗が30パーセントも減りました.スピードも14%速くなります.金井さんはこの船で順位は上げましたが,やはりお年ですから優勝は無理,しかし一流の漕ぎ手が乗ると圧倒的なスピードを見せて優勝しています.  

 

 2-4 フォイルカヤック

図17 フォイルカヤック
 最近カヤックにも水中翼を付ける人が出てきました(
図17).これはノルウェーの話ですが,フォイルカヤックと呼ばれています.数秒間全力で漕ぐと船が水面から浮き上がります.現在500mのタイムが1分28秒,1000mが2分57秒と言いますから,一人漕ぎの船なのに既にインカレのエイトぐらいのスピードが出ています.トップスピードは7.6m/sと言いますから,100mは13.2秒で漕ぎます.エイトは15秒掛かりますから大分速いですね.このカヤックはこの夏発売するそうです.

 設計者はこの船がレーシングカヤックに混じってレースをするのではなくて,新たにカヤックの別種目を作ることを考えています.当然オリンピック種目になることを期待しているでしょう.最終の彼等のねらいはエイトの世界記録,5分19秒を上回ることだそうです.

後ほどビデオで走るところを見て頂きます.

 

3 その他の人力ボート

 3-1 人間の馬力

図18 人間の馬力
 さて人力ボートの話に入ります.まず人間の馬力を見て下さい(
図18).この図は非常に優れたアスリ一トの馬力をサイクリングの場合とローイングの場合で比較しています.横軸は持続時間で分単位,縦軸はその時間持続できる平均の馬力を示しています.例えば6分掛かる時の平均馬力は0.5馬力という具合に読みます. これによりますと,0.1分即ち6秒間という短時間の馬力はローイングの場合,下の線で1.1馬力,それに対してサイクリングは1.9馬力と大きく違っています.これはローイングの場合,フォワード中に漕ぐ仕事をしないからで,休み時間のないサイクリングの方が馬力は大きいのです.         

 しかし1分半を超えるとその差はなくなります.無酸素運動の時には差があっても,有酸素運動に落ち着くとローイングでもサイクリングでも馬力に違いはないことが判ります.これからすると,短距離ではカヤック漕ぎの方がローイングより馬力が出しやすいのかも知れません.

 

 3-2 日本の人力ボートレース

図19 日本の人力ボートレース
 日本の人力ボートレースは1990年に始まりました(
図19).当時,アメリカズカップの技術チームのメンバーが蒲郡のキャンプに船を見に行って,その晩形原温泉に泊まりました.夕食の前,増山先生,寺尾先生と私の3人でお風呂に浸かって話し合っている内に,人力ボートレースとセールボートのスピードトライアルをやろうということになりました.早速全日本と銘打って両方のレースを実行しました.ところが翌年から当時の日本船舶振興会がお金と組織を大々的に使って200隻以上が参加する大規模な人力ボートレース,夢の船コンテストを開いたのです.それに出る方が面白いので,全日本人力は3年で止めてしまいました.セールボートのスピードトライアルは1回切りで終わりました.

 夢の船コンテストでは堀内研究室のチームが3年連続して優勝しました.3年目はワンツーフィニッシュです.後ほどビデオも見て頂きます.
図20 スピードの向上

 ところがその頃から競艇の売り上げが急減して,1994年からはこのレースが行われなくなりました.人力ボートのレースが折角盛り上がったところで,金沢工大,東海大は勿論,東大など幾つかの学校で学生が人力ボートを作って,このレースへ出場するという活動をカリキュラムに取り入れていましたので,何とか存続を計りたいと思いました.考えた末,浜名湖で既に行われていたソーラーボートレースにこの人力ボートレースを合流させたのです.そして現在まで15年間,毎年レースを続けております.

 この間,堀内研究室出身の二つのチーム,コギトとスーパーフェニックスが1,2を争ってスピードを上げて来た状況がこのグラフ(図20)に示されています.でもここ数年は進歩が止まってなかなか20ノットが切れないでいます.

 今年は寺尾先生のお世話になりまして,7月22,23日清水でこの大会が行われることになっています.

 

 3-3 スーパーフェニックス

図22 水中翼
図21 スーパーフェニックス
 これはスーパーフェニックスです(
図21).二人乗りで時速35kmの世界記録を持っています.浮き上がって走るので殆ど航跡が残りません.

 極端に細長い水中翼を使って性能を上げています(図22).アスペクトレシオは20に達します.これによって離水時の抵抗を減らし,少しでも小さい翼を使います.

 2重反転プロペラを使ってプロペラの効率を上げています(図23). さらに船体や水中翼には,カーボン繊維を使うなど,ハイテクの固まりです.
図25 認定書
図24 記録走
図23 プロペラ

 これ(図24)は世界記録を立てた時の走りです.

 この船の世界記録の認定書です(図25).




 3-4 コギト

図26 コギト
 この写真(
図26)は現在のコギトですが,このチームは近いうちに20ノット(時速37km)の壁を越えるべく舟の開発を進めています.20ノットは世界中の人力ボートが挑戦してなかなか超えられない壁,人類の夢というほどの大記録なのです.



 

 3-5 ポンプバイク

図29 ポンプバイク走
図28 飛び乗り
図27 ポンプバイク
 これから先は変わった人力ボートです.始めはポンプバイク(
図27)です.後が主翼,前は水面センサーと連動して迎角が変わり,浮き上がりの高さを一定に保ちます.岸壁からこれに飛び乗ってステップを踏みつけたり飛び上がったりすると翼走します(図28). あおり続ければ走り続けます.当然止まると沈です(図29).

 ある程度の前進速度があるときに水中翼を上下にゆすると推進力が発生します.それを利用しているのですが,時速28kmも出ると言うからこれは驚きです.この船は今年の東京ボートショーにも展示されました.当会の寺尾先生は漁船用にこの推進方法を研究されていました.またアメリカズカップ艇に使おうとして野本先生とお二人で大分検討されましたが,実際には使われませんでした.

 

 3-6 マイレージドライブ

図30 マイレージドライブ
 この船体(
図30)はシーカヤックですが,これに付けた推進方法が変わっています.左右のペダルを交互に踏むと,その下の水中で長さ30cmほどのゴムの羽根が左右に動いて走ります(編者注:ホームページはhttp://www.hobiecat.com/kayaking/miragedrive.html).後ほどビデオで見て頂きます.

 なかなか良く走るという評判ですが.すぐ疲れると言う人もいます.下の写真は二人漕ぎのカヤックと対等に引っ張り合っているところで,引き力があるのでしょう.ホビーキャット社が売っていますので,米国ではある程度数が売れているのではないかと思います.
                        

 

 3-7 フリッパー

 
図33 フリッパー2
図32 上から見る
図31 フリッパー
 当会メンバーの横井さんが発明されたフリッパー(
図31)で,前回発表があったのでご存知と思います.
 斜め下向きに大きな翼が付いていて,船をローリングさせると走ります.
これ(図32)が走っているところです.

 この船,スピードが4ノットも出ていまして,長さ2.7mのこの船は既にハルスピードに達しています. これをもっと速くしようということで細長いウインドサーフインのハルを使うことになりました(図33).これは長さが4.3mありますからハルスピードは5ノット近くなるので楽しみにしています.
図35 性能
図34 ウイング
ウイングはFRPで作って,このような(図34)一様に捻れるものを考えています.
 また水線長を長くすることで,約0.8ノット速くなりそうです.ウイングの改良で後0.2ノット稼ぎたいものです(図35).

 この船,歩くほどの運動量で,歩く倍の速度が出るというあたりが大きな魅力です.また横井さんの話だととても波に強いそうです.大きなウイングが水中に入っていて,しかも水上には波を受けるものがありませんから納得できます.これで海をどこまでも歩けるようになるかと思うととても楽しみです.

 

 3-8 サーフバイク

図37 駆動ユニット
図36 サーフバイク
 これ(
図36)はカナダ製のペダルボートで,人力ボートレース大会の折には,レースの合間にこうして希望者に即興のレースを楽しんでもらっています.
これ(図37)は駆動ユニットで簡単に取り外せます.この船,簡単に転覆もしますが,気楽に乗れる船で,なかなか良くできています.









 

 3-9 パワーフィン

図39 パワーフィン
図38 パワーフィン
 丁度櫨と同じように漕ぐ船(
図38)ですがスライディングシートが付いていて漕ぐ動きは全くローイングです(図39).櫓の先に縦長のフィンの付いているのが見えます.パワーフィンと称し,ヤマハで試作しました.長距離のレースに出て良い成績を残しています.



 

 3-10 HSB-5

図42 前脚の構造
図41 水中翼
図40 HSB
 人力推進ではありませんが,水中翼船を3つほどご紹介します.

これ(図40)はウインドサーフインの水中翼版です.軽風ではスピードが倍近く出ます.
 こんなふうに(図41)水中翼が付いています.Fは水面のセンサーで,これで前翼Dを動かして一定の高さを保って走ります.
 前脚の中身はこのように(図42)なっています.後でビデオを見てもらいます.



 3-11 KF-50

図44 KF2
図43 KF-50
 金井さんが作って,今年2月の東京ボートショーに発表し,3月15日に進水したばかりの水中翼セーリングカヤックです(
図43).

 15日には走り出して間もなく前ストラットを故障,まだ翼走をしていませんが,470級より速いという金井さんの感想です(図44).

今後楽しみです.







 3-12 2PF

図45 2PF
 この船(
図45)は現在製作中です.2馬力の船外機で翼走して20ノットで走る.長さは3m未満ですから免許も検査も要らない,という船です.ところが2馬力の船外機を手に入れてみると予想外に脚が太く,抵抗が大きそうで,船外機の脚を作り直す必要があるかと苦慮しています.






終わりに

 以上で用意したお話は終わりますが,今回のお話の準備中に感じた2点に触れて終わろうと思います.

 まず米国ではスカルがカヌー,カヤックなどのパドルボートと一緒に海でレースを楽しんでいる.それを知ってショックを受けました.私自身,海でローイングは無理と思っていましたから,大変思いがけなかったのです.
 日本でも,パドルボートのレースは頻繁に行われていますから,スカルがこれらのレースに参加するようになったら面白いと思います.今までより荒い水面を漕ぐので,お話ししたような,それなりの準備は要るでしょう.

 しかし参加していれば,いずれ米国のように混合でレースが楽しめるようになると思います.レースをするうちに海でのスカルの良さも見えてくるでしょう,これは楽しみです.
 ただ日本には海用のスカルが今のところありません.日本の会社に輸入してもらうか,作ってもらうか,そこから考えて見たいと思っています.

 もう一つ気になっているのはエイトより速い人力ボートが次々出現したら,漕艇界は一体どう対応するのかということです.今まで国際漕艇連盟は普及のために,新しい工夫を制限してきました.スライディングリガーも禁止したし,水中翼などもってのほかと言いそうです.果たしてそのままで良いのでしょうか?

 ヨットの場合,オリンピック種目をどんどん速い機種に入れ替えているし,カヤックの場合にも水中翼の種目を取り上げる公算は高いと言う気がします.新しい材料や設計の進歩でボートの性能は刻々と変わります.特にカーボン繊維を使ったサンドイッチ構造と水中翼は相乗効果があって,飛躍的にスピードを伸ばします.

 先にお話ししたスーパーフェニックスは既に短距離ではエイトより遙かに速いし,2000mでも多分エイトに勝つ実力を持っていると思います.それに水中翼カヤックは5分19秒を目標として精力的に動いています.

 エイトが人力ボートの中で飛び抜けて速いことが私を含めてオアズマンにとっての誇りでした.それが今崩れつつあります.シングルのカヤックにエイトが抜かれるなんて,冗談じゃないという気持ちが私にもあります.

 ところで,今の時点で水中翼を付けたカヤックとスカルと一体どちらが速いのか,これは私も良く判りません.短距離では馬力の差だけカヤックが有利かも知れません.実はこの原稿を書いているうちに,水中翼スカルを作ってフォイルカヤックに対抗してみたいと思うようになりました.そうなると暫くは水中翼の技術の勝負になるのでしょう,そしてやがて人力の出し方によって短距離,長距離のそれぞれの勝者が決まって行くのだろうと思います.

以上でお話の方を終わり,ビデオに移りたいと思います.長時間のご静聴有難うございました.


ビデオ(約8分)はこちら (LANの速度に応じてお選びください)
wmvファイル(低解像度,160×120, 2.4MB)
wmvファイル(中解像度,320×240, 9MB)
wmvファイル(高解像度,320×240, 52MB)
wmvファイル(高解像度,640×480, 126MB))


資料1 人力ボート関係ホームページURL集
1. Mass Boat Company   http://www.maasboats.com/
2. Sound Rower Open Water Rowing and Paddling Club  http://www.soundrowers.org
3. Open Water Rowing Center(OWRC)  http://www.owrc.com/
4. Hobie Cat Company  http://www.hobiecat.com/
5. Foil Kayak  http://www.foilkayak.com/
6. Human Powered Boats  http://www.humanpoweredboats.com/
7. 日本ソーラー・人力ボート協会  http://www.orange.ne.jp/~jsha/
8. International Human Powered Vehicle Assosiation  http://www.ihpva.org/
9. Pump Bike  http://www.pumpabike.com/
10. (財)日本カヌー連盟  http://www.canoe.or.jp/
11. (社)日本ボート協会  http://www.jara.or.jp/




資料2 参考書
・Long Strokes Bruce C. Brown著 International Marine Publishing Company 出版




資料3 海用スカル比較

2006.4.1 堀内  
メーカー艇名L(m)B(cm)Bwl(cm)重量(kg)価格価格補足記事
Maas USAero6.50644818$3095運賃\$850は別以前のカタリナ・クロッシング主流
Maas USMaas247.3513618\$3295同上現在のカタリナ・クロッシング主流
桑野ツーリング6.2248362218.9万円ローコスト仕様コックピット要改造
桑野アダプティブ6.30534518.636.8万円高級仕様コックピット要改造
CLC USOxford Shell6.25565217.7$659自作用キット価格コックピット要改造,金井さん扱い

 

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