第28回セーリングヨット研究会議事録


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1.日 時:2005年 10月 22日(土)

        11:00〜    会員近況報告
        13:00〜    研究会
        17:30〜    懇親会


2.場 所:

        研究会 - 夢の島マリーナ 2F会議室
        懇親会 - 夢の島マリーナ オーナーズルーム


3.出席者:(敬称略、順不同)

安部光弘、雨宮伊作、市川昌幸、今北文夫、岩嵜正城、上野道雄、楳田壽雄、
大野康一郎、金井紀彦、木下健、小暮欣也、小林寛、沢地繁、添畑薫、高石敬史、
高橋太郎、田原裕介、寺尾裕、戸田邦司、永海義博、西川達雄、林賢之輔、深澤塔一、
福田哲嗣、藤井茂、藤瀬雄輔、増山豊、松井亨介、丸尾孟、宮下雅、森純男、山口眞裕、横井達郎(以上、33名)

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 【皆さんの写真,研究会の様子はこちら】

4.議 事

(1)ローリングフィン推進について          横井 達郎

 水中のフリッパーフィン(横ひれ)を艇体を横に揺さぶる動作によって、羽ばたかせて推進力を得ると同時に安定性も得るというユニークなボートです。若木を少しずつでも育てて行きたいと思っています。本デザインに関し、ぜひご意見を下さい。

(資料図はこちら)



(2)最近のCFD研究について           田原 裕介

 次の2項目:(1) 「Development of High-Performance CFD-Based Optimization for Ship Design (船型設計を対象とした高効率CFD援用最適化手法の開発)」, および(2) 「マルチブロックCFDによる風上帆走時・セール流体力に及ぼす船体影響の検討」について報告があった. まず(1)に関し,ONR(US. Office of Naval Research)補助のINSEAN (Italian Ship Model Basin)・IIHR (Iowa Institute of Hydraulic Research)・OPU (Osaka Prefecture University ? 大阪府立大学)国際共同研究の成果として,MOGA(多目的遺伝アルゴリズム)・CAD・自由表面計算RANS法(レイノルズ平均ナビエストークス方程式解法)を統合したシミュレーション・ベースド・デザインシステムの構築,デモンストレーション,さらにモデル試験によるヴァリデーションを行った結果が報告された.水上艦艇(MODEL 5415)を対象とした単目的最適化(全抵抗最小化)および多目的最適化(全抵抗およびRAO ? Response Amplitude Operators −メリット関数同時最小化)を行い,実際に最適化船型をモデル試験によって検証した結果,構築した手法の有効性が確認できた.今後はカタマランなどの複胴高速船型の多目的最適化を可能とする手法へ拡張する予定である.
 
  Original Bow
Optimal Bow
 
 続いて(2)に関し,平成17年3月大阪府立大学工学部卒業・岡浩太郎君の卒業研究の成果として,アメリカ杯ヨットレースの風上帆走時(AWA20°)におけるセール流体力に及ぼす船体影響を検討した結果が報告された.計算手法には田原研究室で開発されているマルチブロックRANS法を用い,船体有り無し状態におけるジブおよびメインセールに働く流体力を検討した結果,船体の存在により両セールともに揚抗比が増加した.この理由は,セールを揚力面と考える場合,デッキ表面が鏡像面として作用し,見かけのアスペクト比が増加したことによるという見解が示された.これは,いわゆる翼端板効果に類似する効果である.
  With Hull
Without Hull


(3)超高速船型に対する全抵抗最小化について           丸尾 孟

 近年開発が注目されているフルード数0.5を超える超高速船の船型について全抵抗を最小化する手法について提案した。その結果は次のような形に表現される。「排水量を一定として肋骨線形状を相似に保ったまま長さを変化させたとき、粘性抵抗が造波抵抗の8倍となったとき、すなわち造波抵抗が全抵抗の1/9のとき全抵抗最小の船型が得られる」




(4)特別講演「次世代型帆装船の基礎研究」(海上技術安全研究所)  上野 道雄

かつて省エネ時代に近代帆装商船として開発されたこともある帆装船は、今日、地球温暖化ガス削減手段の一つとして船舶分野で新たな意義を持ちつつある。本講演では海上技術安全研究所における次世代型帆装商船に関する以下の研究成果を報告した。  海上技術安全研究所ではスラット・硬帆・軟帆からなる複合帆を改良し矩形軟帆の状態で硬帆と軟帆の間に隙間を設ける等の工夫によって最大揚力係数約2.6の高揚力複合帆を開発した。また、複数の高揚力複合帆を船体上に装備したときの性能を調べるための風洞実験もおこない、帆と帆および帆と船体の干渉によって推力係数が減少することや傾斜配列によってその影響を最小限に抑えることが可能であることを明らかにした。  帆走による斜航角を小さくするための水中フィンに関する実験をおこなうと共にその特性の推定式を求め、その推定式が実用的な精度を有することを示した。さらに、水中フィンと高揚力複合帆の効果を評価するために定常帆走性能解析をおこない、水中フィンを付けた場合が付けない場合に比べて有効馬力を約4.6%小さくできるという結果の例を示した。  ばら積み船のクレーンをブームとし兼用する実用型高揚力複合帆を装備した次世代型帆装船の研究も実施した。風洞実験によって三角形軟帆を持つ高揚力複合帆が単独で最大推力係数2.46の性能を持つことが明らかとなった。  帆装船は従来型船舶とは異なりある程度風を求めて航海する方がその効果を発揮できると考えられるため、従来船以上に航路選定が重要となる。帆装船用のウェザールーティングシステムを開発して、上記クレーン兼用型の高揚力複合帆を備えたばら積み船が北太平洋航路でどの程度CO2削減効果があるかを推定した。航海時間を314時間とした場合の4季4往復の推定計算結果から、従来型ばら積み船に比べて帆装ばら積み船は約17.4%のCO2削減効果があることが明らかとなった。その内訳は、クレーン兼用型の高揚力複合帆の効果が約11.7%、帆装船用ウェザールーティングシステムの効果が約6.5%である。  本研究を通じて次世代型帆装商船のCO2削減効果が定量的に示された。今後さらに改良を重ねることで一層その効果を高めることが期待される。  本報告で紹介した研究の一部は(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構の助成を受けた(社)日本造船研究協会「次世代型帆装船の研究開発」の一部として実施したものです。




(5)推進性能はどこまで良くなったか(一般商船の要目と性能の変遷について) 第1回 山口 眞裕

建造され公表された船舶のデータで、性能の向上を確認しようと、日本船舶明細書でデータを収集しました。今回の対象は、1950年から2004年までの油槽船のデータです。1973年の第1次石油危機を境に変化があり、そのときを境界にして、5年毎にデータを仕分けました。その結果、大きく3世代に分けて見ることが出来ます。
  1 大型化、巨大化の時代              〜1973
  2 省エネ 挑戦期(石油ショック混乱期)  1973〜1983
  3 省エネ 熟年期               1983〜
今回は1回目とし、以後、種々の船種や同じ大きさの時代変化、およびこれらの性能向上させた技術などをお話させていただこうと思っています。 




(6)ヘッドステイの強度について                森 純男

 昨今クルージングヨットを楽しむセーラーのトレンドとして熟年シングル又はショートハンドセーラーが増加していますが、今年度も伊豆半島及び伊豆七島周辺でシングルハンドのセーリングクルーザーが一隻、ヘッドステイの切断でデスマストする事例が発生しました。 幸い人身に支障は有りませんでしたが他にも同様な事例が発生していますので、これらの情報を皆さんに知って頂き原因を探求し今後の参考にしたいと思った次第です。   発表時の皆さんの貴重な意見から判明した事は、ファーリングゼノア形式のフォアステーの上部取り付け部は、常時上下左右の力も掛かっており、取り付け部のフレキシビリテーが必要であること。特に横方向の力を逃がすような構造になっていないと、ワイヤー基部の素線に無理が生じ経年劣化に伴い切断する可能性があると云う事が分りました。今後も増える未熟なままでクルージングを楽しむ熟年セーラー達に、情報の一つとして付け加えて行けたらと思っています。

写真はこちら



(7)競漕艇とオールについての最近の成果         木下 健、宮下 雅樹

 漕艇用具の中で最も重要な働きをする、艇とオールを対象として、以下の点について検討を加えた。(@)1人乗りボートであるシングルスカルを対象として、CFDによる船型最適化を行い、より効率的な船型を設計する。(A)水中でオールブレードに働く非定常流体力のメカニズムを、回流水槽実験やCFDなどによって解明し、オールブレードの形状の改良を行う。

論文要旨はこちら



(8)横波時の漂流力とキール形状 (洋上風力発電浮体の実験例 )    寺尾 裕

波浪推進の最近のトピックスを示した。今までは、波浪推進器は正面向波が最速となることが知られていたが、新たな二翼式のものは、横波中でそれを超える推進性能を示すことが模型実験からわかった。また船形が単胴、または双胴と変わる事で、波浪推進装置の横波中の性能が大きく変化することもわかった。




(8)高速帆走について                      増山 豊

風力は古代より人類が利用してきた原動力の一つであり、200年ほど前までは世界の海上輸送で使える唯一の動力源でもあった。風は今でも吹いており、近年風力発電をはじめとしてその再利用が見直されつつある。ではこの風をビークルの直接の推進力として利用しようとする時、どこまでの高速化が可能なのであろうか?風よりも速く帆走することができるのか、そのメカニズムに迫ってみたい。ということで、船体抵抗がゼロ(アイスヨットやランドヨットがこれに近い)という理想的な状態では、風速の数倍の速度も可能であることを示した。 実際のランドヨットの世界帆走スピード記録は、風速の3.7倍の187.7km/hである。一方、水上艇では水抵抗が大きいため風速の2倍程度であるが、現在の世界帆走スピード記録は48.7ktである。

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5.懇親会

 講演会終了後、今回も夢の島マリーナのオーナーズルームにおいて盛大に懇親会を行いました。今回も各位にご自慢の酒と肴を持参頂く持ち寄り式のパーティーとし、好評でした。市川昌幸さん、楳田壽雄さん、大野康一郎さんに会場の予約から設営準備、懇親会の計画・買出し・運営の全ての面に渡ってお世話になりました。今北さんと林さんにはコーヒーメーカを持参いただき、運営にご協力頂きました。厚く御礼申し上げます。



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6.次回予定

   日時:平成18年4月1日
   場所:江ノ島ヨットハーバー(予定)



(文責;増山,東野。なお一部の講演要旨は講演者ご自身に記述いただきました。)

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