高速シーカヤックK-60と世界一速い人力ボート(東京ボートショー会場でご説明した船)

1:高速シーカヤックK-60

今までのシーカヤックは船体に腰を入れて重心を下げるのが常識でした。K-60は漕艇のシングルスカルのように腰を上に上げて船を細くしました。スカルと同じL/B≒26とすることで、3m/sでの抵抗を3分の2に減じ、同じ馬力で14% 速いボートを造りました。  (こういうシーカヤックは今まで無いようです) また推力2kgfで5.5ノット、5kgfで9ノットも出るので、今ヒールモーメントの発生しないセールを開発中です。

この船はサイドフロートを持っているので決して転覆しません。一方飛び込んで泳いだ後も再乗船するのが容易です。安全で速い船として普及して欲しいと思っています。外板は3mm合板のストリッププランキングで造られていて骨は無く、ウイングはCFRPです。   設計は堀内、建造はカナイ設計です

主要目:
全長6.000m, 全幅2.5m, 喫水線の巾23cm, 重量16kg

2:世界一速い人力ボート

国際人力ビークル協会(IHPVA*1)によって、2000年8月27日に人力ボート「スーパーフェニックス」の走った結果が18.67ノットの世界記録として認定されました。

この船はヤマハ発動機の横山文隆君を中心とするチームによって設計、製作され、現在世界で一番進歩した人力ボートと考えられます。

主要目
全長:4.98m
全幅:2.19m
重量:33.0kg
主翼面積:0.0649u (主翼アスペクトレシオ:20)
プロペラ徑:0.230m+0.215m(二重反転プロペラ)
増速比:11.1
乗員:2名

*1:International Human Powered Vehicle Association
前のストラットと水中翼 プロペラ、ストラット、主翼

前のストラットは舵として働きますが、極力薄く細く抵抗を少なくしています。前翼の面積は0.023u、この写真では翼の厚みしか見えませんが、アスペクトレシオは20に達します。迎え角は写真の左にある水面センサーによってコントロールされ、船首の水面上の高さを時速10km以上で一定に保っています。プロペラは二重反転式にして、効率を上げ、トルクの反作用を無くしています。主翼のストラットは抵抗を減らすため、プロペラを駆動するシャフトが通るぎりぎりまで薄く板厚を削っています。

主翼の取り付け部に隙間が見えます。高速になって、揚力係数が下がると揚力中心が後に移動することを利用して、自動的に迎え角を減らす構造なのです。従って高速ではこの隙間がなくなり、滑らかな表面になります。

迎角を変えることによって、高速で船尾の上がる現象を無くし、更にそれによってストラットの長さを減らし、離水時の抵抗を減らすのが狙いです。

高速では水中翼の抵抗が大きな部分を占めます。ところが離水には大きな翼が欲しいのでそれが抵抗になります。従って如何に離水時の抵抗を減らして、小さな水中翼で離水するかが高速を出す決め手になるのです。離水時の誘導抵抗を減ずるのは効果が大きいので主翼のアスペクトレシオは20まで上げています。その為高弾性係数のカーボン繊維を一方向に引き揃えて造った主翼ですが、航走中は翼端が5?60mmも撓んでいます。極限の構造と言えます。

そうした努力の積み重ねで、この船の抵抗は排水量(175kg)に対してハンプを含めた20ノット以下で僅か5~6%と驚くほど少ないのです。10ノットのハンプを超えて20ノットに加速するのに、ハンプで体力の余力を残す為です。

2002.2.20 堀内浩太郎記