第20回セーリングヨット研究会議事録

1.日 時:

2001年 10月 27日(土) 11:00〜17:00 (懇親会 18:00〜20:00)

2.場 所:

夢の島マリーナ2F会議室

3.出席者:

(敬称略、順不同)------sは学生、Nは初参加
野本謙作、丸尾孟、堀内浩太郎、高石敬史、村尾麟一、木下健、山口眞裕、今北文夫、林賢之輔、大橋且典、横山一郎、永井潤、沢地繁、戸嶋俊之、添畑薫、永海義博、松井亨介、寺尾裕、 雨宮伊作、大野康一郎、横井達郎、小暮欣也、金井紀彦N、清水勝明N、小林寛s、増山豊
------ 以上26名

4.議 事

(0) 会員近況報告(抜粋)

野本先生:
近世の我が国の船舶の基本資料となる船舶原簿がなくなりつつあり、これを集めるのに忙しい。また、これらの機帆船の帆がガフリグではなく、竹の骨の入ったジャンク型になったことのルーツが、三池炭鉱の石炭を積み出していた輸送船にあったことがほぼわかってきた。

丸尾先生:
5月にニュージーランドへ行ってきたが、一般道路でも100km/hのスピードで走っており、このスピード感覚は日本と違うと思った。また、EUが共同研究で64ktの1万トンコンテナ船の開発を本気になって考えており、日本は大丈夫かと心配している。

添畑さん:
今、ヨーロッパはヨットの大ブームだ。この8月に行われたアメリカズカップ150周年記念レースで、イギリスのGBRに引き取られた「韋駄天」が大活躍した。ルイビュトンカップで優勝したプラダチームが、そのオリジナルのクルーで固めていたのに対し、GBRは結成まだ5ヶ月というチームにもかかわらず、そのプラダと7時間走って10秒しか差がつかなかった。この韋駄天の走りによって、GBR内での金井さんと高橋さんの評価ががらりと変わった。とても嬉しい。

新しく参加されたのは次のお2人。

金井さん:
前回、堀内さんから紹介のあったシーカヤックK-60を製作し、奄美シーカヤックマラソン(36km)を、3時間46分で走破した。同マラソンの様子をお昼休み時間に紹介いただいた。

清水さん:
ジシクロペンタジエンという炭素系プラスチックの新しい成形法を開発した。同内容について、講演いただいた。

(1)「MALT'S マーメイドV号」の設計

横山一郎氏((株)マリンデザインシステム)

 "「古い設計ですが、キングフィッシャークラスを作りたいのだけれど.....」という堀江氏からの電話でこのプロジェクトは始まった。「マーメイド号」の堀江謙一氏だとはまったく気がつかず、「どうしてそんな古い設計で...」と言ってしまった。 数分後、電話の主に気づき、このプロジェクトの全容が堀江氏より語られていった。"・・・という出だしで話が始まり、ウイスキーの樽だったオーク材を合板に再生して艇を建造する際の苦労などをお話いただいた。

(詳細はこちらをご覧下さい。


(2) シリコン型、真空注型によるMETTON(ジシクロペンタジエン:炭素系プラスチック)成形法

清水勝明氏((株)三愛)

 炭素系プラスチックのMETTONは、刃物で切ったり、ドリルで穴を開けることはできるが、耐磨耗性はやたら強くてヤスリがほとんどかからず、さらに散弾銃で打ち抜くこともできないという強靭性を持つ。また、元素的には石炭と同じなので、廃棄するときは生ごみと一緒に燃やすことができるという材料。ただし、酸素に触れると固まらなくなるので、空気中では成形できない。帝人では窒素雰囲気の中で成形する方法を開発しているが、これを真空中でしかも吸い込み法で成形する方法を開発した。吸い込み法なので圧力もかからないので、シリコンゴムの型でもよい。これによって型代が大幅にコストダウンできるとともに精度の高いものができる。材料費そのものも安いので、今後金属の鋳物に替わる材料として大いに用いられるものと考えられる。

 ヘルメットや携帯電話のケースなど、METTON製品の実物を提示しながらお話頂いた。


(3)WIGの新構想およびFan Wingについて

村尾麟一氏

 ACV(Air cushion vehicle)研究会の会長でもある村尾先生より、旧ソ連や中国で積極的に開発され実用化されているにもかかわらず、ほとんど西側の世界には紹介されてこなかったWIG(表面効果飛行機)について、その特性や機能、研究開発の歴史などを、写真を交えながらお話いただいた。さらに、今後の開発に向けての研究の成果を示された。

またイギリスで開発された、(エアコンなどに用いられている)シロッコファンのようなものを翼の中に組み込んだ模型飛行機の映像を紹介いただいた。見ればなるほどと思う発想であるが、実際に作って飛ばしてしまうのがすごい。ほとんど垂直方向に飛び上がる様子は、プロペラ版ハリアーを思わせ、皆さん感嘆することしきり。桜井先生に見てもらいたかった。

(詳細はこちらをご覧下さい→[pdfファイル(52KB)]  [Word文書(756KB)])


(4)人力ボートの話題5件

堀内浩太郎氏

 前回の研究会で紹介いただいた金井さんのシーカヤックK?60の、奄美シーカヤックマラソン(36km)におけるレース成績について、これまでの記録と比較しながら性能向上の様子を紹介頂いた。なおこのレースの模様は、上記のように金井さんによってビデオで紹介された。

 また、これに加えてWave Bike, Trampo Foil, 及びPrestous Pogo Foil、さらにヤマハ関連会社で商品化された「パワーフィン」といった、人力ボートの種々のアイデアなどについて、写真やビデオで紹介いただいた。なお、この「パワーフィン」は現在製造されていないとのこと、残念。

(詳細はこちらをご覧下さい。パワーフィンの開発を行ったヤマハ発動機の林邦之氏の報告書も入っています。→[pdfファイル(205KB)]   [Word文書[1,034KB]


(5)漕艇中のオールに働く直圧力係数のRowing Rate依存性

小林 寛氏(東大大学院)

Rowingにおいて、オールのブレードは水中を時々刻々変動する流場の中を移動している。 その際ブレードは、ある迎角と対水流速をもって運動しているが、 静的な揚抗力係数を用いても、ブレードに働く流体力を妥当に推定できないことが 実艇実験により明らかになった。

今回、ブレードの運動を模して、一様流中で振動する平板翼に働く流体力を計測し、 平板に働く流体力が、静的なそれに比べて2倍以上働く場合もあることが分かり、 ブレードに働く流体力を推定するためには、動的な影響を考慮することが不可欠であることが 明らかになった。

(詳細はこちらをご覧下さい。→[pdfファイル])

(当日のプレゼンテーションの再現はこちらです。右下隅のスクリーンのシンボルをクリックすると、スライドショーが始まります。左クリックで前進、右クリックでナビゲーションができます)


(6)浪華丸の下手回し操縦運動シミュレーション

増山 豊氏(金沢工業大学)

 '99年に復元建造され、海上帆走実験を行った菱垣廻船「浪華丸」の下手回しの操縦運動シミュレーションを行った。サージ、スウェイ、ロール、ヨーの4自由度について運動方程式をたて、実測された舵角変化の時系列データを入力として、ルンゲクッタ法で船体運動の様子や航跡を求めた。実測値とほほ一致する結果が得られたが、舵力に関する解析をもう少し詳しく行い、今後さらに精度を高めたいとのこと。


(7)海王丸で参加したボストン〜ハリファックス帆船レースについて

雨宮伊作氏(独立行政法人航海訓練所)

 2000年夏,北米東岸のニューヨーク,ボストン,ハリファックスの諸港で開催されたミレニアム記念イベントに海王丸が参加し,世界各国から参加した練習帆船と交流した。これらの練習帆船から50隻余がボストン,ハリファックス間の帆船レースに参加し,全長120ft以上の大型帆船であるクラスAでも13隻がエントリーして4日間350海里のレースを競った。

 レース前半は霧やアゲインストの弱風に悩まされて最下位からスタートした海王丸であったが,後半南から西風力4から5の良風を得て,船齢の古い帆船や小型の帆船群を抜きさって,完走した30隻中10位でゴールすることができた。しかしながらポーランドで80年代に建造されたダルモジェジー,ミールといった軽排水量で帆面積が大きいうえ,帆走艤装にも革新的なデザインを取り入れた大型帆船には,過去本研究会で芳村博士が発表したように風上航性能,帆走速力ともにかなわず,10ノット以上で帆走している風上側をダルモジェジーに2ノット以上の差で追い越されるという屈辱的な経験もした。

 一方レースの順位は,所要時間に各船固有のハンディキャップに相当するTCFを乗じて得た修正時間で決定されるため,小さなTCFを与えられた海王丸が総合,クラスともに1位となった。今後は海王丸のTCFがより大きくされるであろうが,次は北太平洋や北大西洋の横断といった強風の長い距離で,戦ってみたい。       

(この講演内容に関連する美しい写真はこちらでご覧下さい。)


5.懇親会 

 講演会終了後、新木場センタービル1F「季膳房」に会場を移し、盛大に懇親会を行いました。なおこの会場は、土曜の夜ほとんど人気のなくなる新木場近辺で、地区幹事の松井さんが見つけてこられたところで、土曜休業のところ無理にあけてもらったものです。料理もおいしくいい会場でした。

 夢の島マリーナ会議室の使用は、同マリーナに船を置いているオーナーの場合、早い時期から予約ができるとのことで、大野さんにこのオーナー特権を行使していただきました。おかげさまで、大きな窓からハーバーが一望できる素晴らしい環境の中で研究会を行わせていただくことができました。また、大橋さんには大きなスクリーンを、小林さんにはパソコンプロジェクタを、松井さんにはOHPを持参いただきました。皆様に厚く御礼申し上げます。


研究会写真集をお楽しみ下さい。


6. 次回予定

日 時:

平成14年2月9日(土)東京国際ボートショウにあわせて

場 所:

東京ファッションタウンビル(東京ビッグサイト向い)

(文責;増山)