アメリカ造艇学校見聞記

金沢工業大学 増山豊



1 はじめに

 平成9年4月下旬に、アメリカのワシントンDCにおいて、アメリカ機械学会(ASME)主催の国際ソーラーエネルギへ会議が開かれ、これにソーラーボートに関する論文を発表するため参加した。帰路、以前より興味のあった木造船の造艇学校を見学する機会を得たので報告する。今回訪問したのはメイン州のThe Landing School of Boat Building and Designとメリーランド州のThe John Gardner School of Boatbuildingの2つである。アメリカにはこのような造艇学校が多数あり、これらの一覧表を添付資料(Wooden Boat誌April, 1997抜粋)に示す。

2 The Landing School of Boat Building and Design

 1978年設立で、アメリカのこのような造艇学校としてははじめて国の認可(ACCSCT)を受けた学校であり、アメリカ国内でベスト3に入るといわれている。 小型艇造艇(定員12名)、大型艇造艇(同12名)、設計(同20名)の3つのコースを持っており、各々のコースは10ヶ月(1年)で終了する。各々のコースは独立しており、1つで終了してもいいし、3つとも受講してもよい。2つのコースを受講する学生は約2割、3つまで取るのは1割以下とのことであった。各コース共に授業料は$8,550であり、この他に施設費として$150、また道具代または参考書代として$900程度必要とのことである。なお建造した船は受講者のものになるのではなく、商品として売却される。下記の造艇コースに示すように、原図から完成までを通して行うのがこの学校のよい点であり、セールスポイントであるとのことであった。

・小型艇造艇コース(定員12名)

前半は3人1組でdoryと呼ばれる小さなディンギを造る。後半は4人1組となり20フィート程度のデイセーラーを造る。ともに木造艇で、原図から始めて最後のペンキ塗りまで行う。木製のマスト作りも行う。

・大型艇造艇コース(定員12名)

6人1組となって、10ヶ月で26フィート程度のコールドモールド艇を造る。内作や、エンジン据え付け、船内配線、艤装品取付まで行う。ハルとデッキはエポキシによりFRPコーティングを行う。

・設計コース(定員20名)

高校卒業程度の学力をベースとして、造船学、設計学を講義し、設計課題として、セールボート、プレーニングボート、コマーシャルボーとをこなした後、各自の卒業設計を行う。2人に1台の割でAuto YACHTと呼ばれるCADをインストールしたパソコンを用いることができる。特別講師としてOlin Stephensらも講義する。

3 The John Gardner School of Boatbuilding

ワシントンDCのすぐ近くのアナポリスにあるこの学校は1994年設立で、講師1人で規模は小さい。"Dean of American Small Craft"とも呼ばれる故John Gardner(1995年没)のもとで勉強したClark Postonが設立し、講師となっている。規模が小さいため学生数も不定であり、カリキュラムも適宜変わるようである。訪問時はフレームに樫の蒸し曲げ材を用いたモータークルーザーと、ディンギを3つ並行して造っていた。アナポリスは海軍兵学校のある町で退役軍人も多く、このような人が老後の楽しみで取り組むという受講生も多いようである。経営的には楽ではないようであった。

4 おわりに

経営的には決して楽ではないようであったが、このような木造船の建造や設計を教える学校がいくつも成り立っていることを誠にうらやましく思う。またこのような学校卒業生が毎年送り出されていることにアメリカのすごさを感じる。


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